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  • 執筆者の写真須藤 由希子

「晩秋の雑草展」について

更新日:2019年12月5日






2019年1月12日 - 2月9日 Take Ninagawa にて開催した「晩秋の雑草展」についての説明文です。


今回描いたのは、私の家の近所を流れる川沿い(横浜市・鶴見川)の土手で見つけた風景と、そこに生える植物です。

場所について詳しく言うと、下水処理場で再生された水が川へ出て行く水門の脇の、舗装されているところです。(写真をご参照ください。)

地面はコンクリートのブロックに覆われていますが、老朽化が進みブロックの隙間からたくさんの雑草がたくましく生えています。毎年晩秋に草刈りが行われ、春にまた生えてきます。

川の土手で日光を遮るものがなく日当たりが最高、そしてブロックの隙間にのみ生えるので他の雑草との距離を保てる環境があり、一本一本が気持ちよさそうに立ち、紅葉し、美しく生えている姿が見られました。





私はその景色と、一本一本の植物に感動しました。

こんな街中にあって、ほとんどだれも注目しないようなところにこれほどの美しい場所があるなんて、そしてあまりにも身近すぎて、たくさん生えすぎていて見過ごしがちな雑草が、よく見るとこんなにも美しいなんて、ということに純粋に驚きました。

私の発見は目新しいものだとは思わないけれど、それでもこの身で感じた感動に価値がないわけではないと信じて描き始めました。


大きな風景画は、手前のほうに描かれた植物が実際の植物の原寸大になるように描いています。私の感動が眼前に、そのままのスケールで広がるように描きたいという挑戦でした。

雑草一本一本を描いた小~中作品は、全て原寸大で描かれています。大きな風景画の中に描かれていない種類のものもありますが、数年にわたって観察し続けていた中で、一度はその場に生えていたことがある種類のものを描いています。


今回の作品群はとりわけ取材を入念に行いました。植物に対する尊敬の念から、できる限り正しく植物の構造を描きたいと思いました。2012年に制作し始めたものが2018年にやっと完成した理由も、取材をしっかりとしなければ描けなかったからです。

晩秋は短く、草刈りは容赦なく行われ、他の仕事に追われていれば当てる時間もなく。

取材の行程は、


1.現場でのスケッチ

2.現場で

写真撮影

3.植物を刈り取って持ち帰る(小~中作品については全て)

4.室内でスケッチ

5.室内で写真撮影

6.刈り取ってきた植物を逆さ吊りにしてドライフラワーにする

といった感じです。

大きな風景画を描いている時は、週に一回土手に行って、登場する種類の植物を採取していました。


2019年1月8日

須藤由希子




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